仮想通貨所得の税負担が軽減へ──「資産形成の選択肢」としてどう向き合うべきか

政府・与党が、暗号資産(仮想通貨)取引の利益に対する税率を 株式と同じ一律20%へ引き下げる方向で検討している ことが明らかになりました。現在は給与所得などと合算され、利益によっては最大55%の税率が課されているため、分離課税への移行は投資家にとって大きな負担軽減につながります。

政府は金融商品取引法の改正も同時に進めており、取扱業者への情報開示義務や顧客資産の保全など、取引環境の整備が進む見通しです。制度と安全性が整いつつある今、仮想通貨を資産形成にどう組み込むべきかを考えるタイミングが訪れているといえます。

仮想通貨は資産形成に組み込むべきか?

結論から申し上げると、「完全に無視する必要はありませんが、資産の中心に据えるものでもありません」 という立場です。

これまで仮想通貨は「価格変動が激しい投機的な対象」と見られがちでした。しかしブロックチェーン技術の発展と活用領域の拡大に伴い、世界的には一定の金融資産として扱う流れが進んでいます。特にビットコインはETF化や上場企業の保有などが進み、「デジタルゴールド」として長期保有されるケースも増えています。

日本でも20%の分離課税が実現すれば、仮想通貨は NISAとは別枠の“成長資産” として、ポートフォリオに組み込む選択肢がより現実的になると考えています。

とはいえ、明確なリスクは存在します

一方で、通常の株式投資とは異なるリスクを十分に理解しておく必要があります。

  • 価格変動が極端に大きいこと
    ビットコインであっても、数ヶ月で30〜40%動くことは珍しくありません。
  • プロジェクトの存続性が不透明であること
    アルトコインでは開発が停止し、価値が大幅に下がることもあります。
  • 取引所の破綻やハッキングのリスクが完全には消えないこと
    法整備が進んでもゼロにはなりません。
  • 為替リスクを同時に抱えること
    仮想通貨はドル建てで動くため、円安の影響も受けます。

このように、仮想通貨は“ハイリスク・ハイリターン”の性質が強いため、資産の中心に置くべきではありません。しかし、 リスク許容度に応じて1〜5%程度の少額を組み込む のであれば、今後の資産形成の幅を広げる意味で、十分に検討する価値があると感じています。

仮想通貨を組み込む場合のポイント

もし仮想通貨をポートフォリオに加える場合は、次の点を押さえておくことをおすすめします。

  1. まずはビットコインとイーサリアムに限定すること
    新興コインは魅力的に見えますが、成功する確率は高くありません。
  2. 短期売買ではなく、長期保有を前提にすること
    税制の変更により、長期保有のメリットがさらに大きくなります。
  3. 資産全体の1〜5%以内に抑えること
    仮に価値がゼロになっても生活に影響が出ない範囲で行うことが重要です。
  4. 国内の大手取引所を利用すること
    コンプライアンス体制や顧客資産の分別管理が整っているところを選びましょう。

税制改正が実現すれば、利益計算がわかりやすくなり、売却時の心理的ハードルも下がります。制度面の負担が軽くなることで、仮想通貨を適切に扱いやすくなると期待しています。

資産形成は“選択肢を広げる時代”へ

低金利の長期化や物価上昇、社会保障費の増加などにより、私たちが自分で資産を育てる必要性はますます高まっています。積立NISAやiDeCoのような長期投資の土台を確保したうえで、仮想通貨を少額取り入れることは、資産形成の新しい戦略になり得ます。

過去のイメージだけで判断するのではなく、制度や技術、世界の動きを総合的に見ながら、自分の資産形成の幅を少しずつ広げていくことが大切です。仮想通貨はその選択肢の一つとして、リスクを理解したうえで検討する価値があると考えています。

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