最近、「値上げ」という言葉を聞かない日はないほどです。パンや牛乳、ガソリンに電気代、そしてお酒まで。私たちの暮らしの中で、じわじわと“上がっている”実感を覚える場面が増えました。
そんな中、11月4日に発表されたサントリーのニュースが話題になっています。
サントリーは2026年4月1日出荷分から、ウイスキー・輸入ワイン・焼酎など 39銘柄(187品目) を対象に、2~20% の値上げを行うと発表しました。
ウイスキーでは「響」「山崎」「白州」の3銘柄が対象となり、例えば「響 JAPANESE HARMONY(700 ml)」は、税抜き希望小売価格が 7,500円→8,000円 に上がります。
輸入ワイン26銘柄も2〜6%、焼酎「鏡月」シリーズなどは最大20%の値上げになるとのこと。
理由は、「原材料や輸送コストの上昇を企業努力だけで吸収するのが難しいため」。サントリーだけでなく、食品メーカーや外食産業の多くが同じ課題に直面しています。
値上がりはお酒だけじゃない
値上がりの波は嗜好品に限りません。
ここ数年で、私たちの食卓を支える基本的な食品も上昇しています。
特に今の季節、気になるのは「お米」です。
秋は新米が出回る季節ですが、今年の米価は例年より高めの水準で推移しています。
5 kg袋の小売価格は、全国平均で前年より 10〜15%程度高い と言われています。地域によっては2倍近くまで上がったという声もあるほどです。
背景には、夏の猛暑や水不足などの影響による収穫量の減少、さらに肥料や燃料などの生産コスト上昇があります。
生産者にとっては“採算を取るための必要な値上げ”であり、消費者にとっては“家計に響く上昇”です。
「新米を楽しむ季節なのに、手に取りにくい価格」という声も聞かれます。
光熱費・日用品も上昇中
加えて、電気・ガスなどの光熱費も値上がりしています。
政府の補助金が段階的に縮小されたことで、2025年春以降は多くの家庭で電気料金が月数百円〜千円程度上がっています。
再生可能エネルギーの普及を支える「再エネ賦課金」も引き上げられ、エネルギーコストの上昇が続いています。
また、日用品・外食・宅配便なども少しずつ値段が上がっています。
飲食店ではメニュー価格が10円、20円単位で見直され、スーパーでは“内容量そのまま・価格アップ”または“価格据え置き・量を減らす”いわゆる“実質値上げ”も増えています。
なぜ値上がるのか?共通する3つの理由
こうした一連の値上げには、共通する背景があります。
- 原材料・資材の高騰
原油・小麦・とうもろこし・ガラス・紙など、あらゆる素材の国際価格が上昇しています。 - 輸送・物流コストの上昇
燃料価格高騰や人手不足によって、国内外の輸送費が上がっています。 - 為替の影響と構造的なコスト上昇
円安による輸入コスト増、さらに長引くインフレで、企業の内部努力だけでは吸収しきれない状況が続いています。
サントリーの発表にもあった通り、「自社努力では限界」という言葉が象徴的です。これは、すでに多くの産業で現実になっています。
それでも、生活を豊かにする工夫を
値上げが続くと、つい「もう何もかも高い」と嘆きたくなります。
しかし、少し視点を変えれば、「買い方を工夫する」「使い方を見直す」ことで対応できる部分もあります。
たとえば――
- お米は10 kg袋などの大容量購入や、産地直送の定期便を利用する。
- 電気代は契約プランを見直す、電球をLED化する。
- 嗜好品は“特別な日に楽しむ”という価値を再定義する。
また、地域の直売所や地元産品を選ぶことも、輸送コストの影響を減らす一つの方法です。
「値上げ」は悪ではなく、変化のサイン
“値上げ”は、単なる負担ではなく、「社会のコスト構造が変化しているサイン」でもあります。
資源や人の労働、環境負荷を適正に反映した価格づけが進んでいると考えれば、少し見方が変わるかもしれません。
もちろん、家計への影響は無視できません。
だからこそ、私たち消費者一人ひとりが「どこにお金を使うか」「何を選ぶか」を意識的に決める時代になってきた――そう言えるでしょう。

コメント