「老後は年金で月30万円くらいあれば安心」そんな理想を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。住宅ローンを終え、旅行や趣味も楽しみながら、医療費にも不安のない生活。確かに月30万円あれば、比較的ゆとりのある老後生活が想像できます。
しかし実際のところ、年金だけで月30万円を受け取れる人はどれくらいいるのでしょうか?
結論から言うと、これは**ごく一部の「超高所得者」**に限られる数字です。
今回は、以下のポイントを具体例を交えながらわかりやすく解説します。
- 年金月30万円の内訳
- そのために必要な現役時代の年収
- 日本全体で見たときの「上位何%」に該当するのか
- 一般家庭が現実的に月30万円を目指す方法
年金月30万円の内訳とは?
日本の公的年金は、主に次の2つで構成されています。
- 老齢基礎年金:国民全員が対象(定額)
- 老齢厚生年金:会社員・公務員が対象(収入比例)
令和7年度時点の老齢基礎年金の満額は、月6万9,308円です。
つまり、月30万円の年金を受け取るためには、以下の金額が必要になります。
- 老齢基礎年金:約6.9万円
- 老齢厚生年金:約23.1万円
ポイントはここです。差がつくのは、ほぼ老齢厚生年金だけなのです。
老齢厚生年金23万円を得るには、年収はいくら必要?
老齢厚生年金は、次のような考え方で計算されます。
平均標準報酬 × 0.55% × 加入年数
今回は、以下の条件で試算します。
- 厚生年金加入期間:40年(22歳〜62歳)
- 必要な老齢厚生年金:年276万円(月23万円)
この条件で逆算すると、「276万円 ÷(0.55% × 40年)= 約1,254万円」となります。
つまり、40年間、平均年収約1,250万円を維持し続ける必要があるという計算になります。
昇給があっても、若い頃の年収が低ければ平均は下がります。逆に一時的に高収入でも、長期間続かなければ届きません。
年収1,250万円は現役世代の上位何%?
国税庁「民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の状況は以下の通りです。
- 給与所得者の平均年収:約478万円
- 年収1,000万円超の割合:約6.2%
- 年収1,500万円超の割合:約1.7%
年収1,250万円は、この間に位置します。つまり、おおよそ上位3〜4%程度と考えられます。
さらに重要なのは、**「その水準を40年間維持できる人」**という条件です。管理職・役員・専門職・経営者クラスでも、現実にはかなり限られた層だと言えるでしょう。
一般的な会社員の年金はどれくらい?
では、一般的な会社員の場合はどうでしょうか。
【ケース:平均的な会社員(年収478万円)】
- 厚生年金加入:40年
- 老齢厚生年金:478万円 × 0.55% × 40年 = 約105万円/年(月約8.8万円)
- 老齢基礎年金:月約6.9万円
- 合計:月約15.7万円
これが「平均像」に近い現実です。
夫婦合算なら月30万円は現実的?
ここで視点を変えてみましょう。
共働き夫婦で、ともに平均年収の場合は以下のようになります。
- 1人あたり:月約15.7万円
- 夫婦合算:月約31.4万円
実は、夫婦共働きで厚生年金に長く加入していれば、月30万円は十分に到達可能なのです。「個人で月30万円」は超難関でも、「夫婦で月30万円」なら一気に現実味が増します。
年金を増やすために現役時代にできること
個人で、あるいは夫婦で理想の受給額に近づけるためには、以下の対策が有効です。
① 厚生年金に長く加入する
60歳以降も再雇用などで働き続ければ、加入期間が伸び、年金額は増えます。
② 年金の繰下げ受給
年金は最大75歳まで繰下げ可能。75歳まで繰り下げると、年金額は84%増になります。
(例:月20万円 → 約36.8万円)
これは長生きリスクへの非常に有効な対策です。
③ iDeCo・NISAで「自分年金」を作る
年金だけで足りない分は、以下の制度で補うのが現実的です。
- iDeCo:節税しながら老後資金づくり
- NISA:非課税で資産形成
まとめ:年金月30万円は「戦略」で近づける
年金だけで月30万円を得るには、年収1,200万円超を40年維持する超高所得者である必要があります。
しかし、以下のポイントを押さえることで、一般家庭でも「実質月30万円」に近づけることは可能です。
- 夫婦合算で考える
- 厚生年金の加入期間を延ばす
- 繰下げ受給を活用する
- iDeCo・NISAを組み合わせる
大切なのは、「年金だけ」に頼らず、現役時代から設計すること。
老後の安心は、突然手に入るものではありません。今からできる一歩を積み重ねることが、ゆとりある老後への近道です。

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